もう少し詳しく書いてみる(その4)
全順序集合 - くるるの数学ノート
もう少し詳しく書いてみる(その1) - くるるの数学ノート
もう少し詳しく書いてみる(その2) - くるるの数学ノート
もう少し詳しく書いてみる(その3) - くるるの数学ノート
前回、「これでいけるのか、っていうのがちとわからないんですが」なんて書いたんですが。すみません、大ボケしました。Justinに質問する前に気づいてよかったです。
(多分)証明できるのは以下の定理です。
κをとなるような正則基数とする。このとき、以下の条件を満たすような全順序集合Xは同型を除いてただひとつ存在する。
- Xの部分集合Yを、Xの可算部分集合の極限とならないような元の全体として定義する。このときYは稠密
- 濃度がκとなるような稠密集合が存在する
- 非有界集合の濃度はκまたはそれ以上
- cut-complete
最初に書いたやつと少し変わっていますが、同値になっているはずです。わかってなかったのは、この最初の条件が本当に必要かということなのですが、昨日必要だということに気づきました。これがすぐにわからなかったのは、全順序集合のことを最近研究しているものとしてとても恥ずかしいんですが。
Kurepa treeという概念がありまして、例えば構成可能性の公理(V=L)を仮定すると構成できます*1。これを使うと、としたときに上記の条件のうち2-4を満たすが、条件1は満たしていないような全順序集合Xが作れます。しかも、この全順序集合は実数体に埋め込めるような非可算部分順序を持ちません。ところがはカントール集合のコピーが入っています。というわけで、Xとは同型ではありません。かなりはしょってますが、Kurepa treeの定義を知っている人ならば証明できると思います。
というわけで、上に書いたやつが多分best possibleでしょう。これの証明は…、まあ次回があったらそのときに書きます。
んーと。これが本当に正しいならおそらくすでに知られている結果だと思います。そういうときには数学者たるものちゃんと調べてクレジットつけないといけないんですが。これ、論文じゃないしいいですよね…。
今回、いつもと違って長めに書いたのは、もちろんid:nightintunisiaさんのコメントを受けてという面もあるのですが、集合論で問題になってくるポイントがいくつか出てくるからでもあります。
一つは、大きい濃度の対象を考えているときに小さい濃度の部分が悪さをして上手くいかないという現象。今回の例ではcofinalityが可算になる話とかは典型的だと思います。上の話をしている最中にcountable cofinalityなところで苦しむとか。
もう一つは、もともとの定義には濃度が使われていないにもかかわらず、拡張するときには濃度概念が重要になってくるという現象。最大元や最小元が存在しないというのは単に元一つの問題に見えるんですが、これを拡張するときにはcofinalityとcoinitialityという概念が必要になりました。
そういうのの拡大版でまあ苦しむわけですな。
*1:で十分ですが