3時間でわかった気になる強制法 その2-1

前回、単純にやろうとしたときにどのような問題があるかをみました。今回は解決篇です。あ、これはCohenがどうり思いついたかは無視して、こんなふうに発見していくのが自然かなという話をします。

M をZFC の可算モデルとしましょう。これに新しい実数r を付け加えて出来るモデルをM [r]とかくことにします。問題はZFC をみたすようにするときM の構造がぐちゃぐちゃになってしまうことでした。
いや、ぐちゃぐちゃになっても最終的にまとまれば良いかもしれませんが、まあ自然な発想としてはMの構造をあまり壊さずに拡張したいところでしょう。さて、どうしましょう。

名前

最初のアイデアは、M[r]の元それぞれにM からみえるような"名前"をつけることです。これは単に名前なので、その元の性質をM上で完全に記述するものではありません。というか、そうなってしまったら、M[r]は拡張になりません。
じゃあなんでわざわざ名前をつけるのかと言いますと、すくなくとも名指しは出来るからなんですよ。"M[r]になんか変な元があって"というより"\tauって名前のやつが"のほうがよほど気分が楽なので。名前を言い当てられた神魔は力を失うっていうのと同じです。*1
もっとも、この"名前"はもっと情報をもっています。rはMの中にはない新しい実数ですが、このr さえ与えられれば、名前からr の性質を完全にひきだすことが出来るようになっています*2
名前、または名称はname の訳なのですが、昔はterm とも呼ばれていました。term には(技術)用語という意味もありますが、数学における項という意味もあります。*3そう考えるとなんか辻褄があう気がします。x^2+1はx がなにかわからないと数にはなりませんが、x さえ決まればわかりますし、部分的な情報、例えばx\geq 1からx^2+1\geq 2は言えるわけですよ。

r の部分的情報と決定

もしM[r]の元に全て名前がついて、r さえわかればそのなまえで表されている元のことがわかるとしても、やっばりMの中ではあまり意味を持ちません。そのrが謎なんですから。
そこで、名前の性質をもっと強めて、"Mの中では書けるようなrの性質によって、名前で表されているM[r]の元に関する命題を決定出来る"としましょう。あー、ややこしいっすね。
具体例行きます。\tau, \sigmaを名前とします。このとき、\tau\in\sigmaが成り立つかを知りたいとしましょう。前節で書いたのは、rがわかればこの命題の真偽もわかるよってことでした。でも、rがなにかわからないMのなかでそういう話をしたいのです。そのために、例えばr(0)=0かつr(1)=0なら\tau\in\sigmaだよ、とかいえるようにしましょうよと。そうなれば、Mの中ですくなくとも"rがこうならM[r]ではこうだ"、とか言い始められるわけです。

強制概念

"Mの中で書けるr の性質"を何らかの形で表現しているものを集めたものが強制概念と呼ばれる半順序集合です。"全て"とか書いてないことに注意。どのような部分的性質を集めるかで拡大モデルの性質が変わってきます。
例えばPを\omegaから{0, 1}への有限部分関数全体の集合とします。これは、p\in Pが"rはpの拡大である"という性質を表していると考えれば強制概念となります。
さてと。問題は、ここに書いたような性質を持つ名前とrが存在するかと言うことです。それは次回に

*1:そのターゲットの狭すぎる例えやめなさい

*2:あー、これは厳密には嘘。どう嘘かは宿題

*3:というか、後者を思い浮かべる方が普通だと思いますが、最近になってようやく気づいた私です