全順序集合

イガさんのところでの全順序の話の続き。以下の予想が成り立たないという反例の構成をやります。

全順序で、最小元と最大元を持たず、濃度が κ の稠密部分集合を持ち、上に有界な任意の空でない部分集合が上限を持つ、稠密な集合で、その濃度が2^\kappaであるものは、互いに isomorphic 。

面倒なので一般連続体仮説(GCH)を仮定しておきます。そうすると、{}^\kappa 2に辞書式順序を入れたものから最小元と最大元を削って、あとはジャンプになっているところを同一視してやると上記の条件を満たすようなものができます。この順序を{R}_\kappaとでも呼びましょう。
XとYが全順序集合のとき、X+Yでその二つを順に並べたものを指すことにします。ここで、{R}_\kappa+1+{R}を考えてみましょう。あ、1は元がひとつの全順序です。要するに、{R}_\kappa{R}の間にひとつ元が挟まっているわけです。
すると、この全順序は上記の条件を満たすにもかかわらず、{R}_\kappaとisomorphicにはなりません。まあ、いろんな確かめ方があると思いますが、実数と実数の間には連続体濃度個(ここでは\aleph_1ですが)の元しかありませんが、{R}_\kappaでは全ての元と元の間には2^\kappa個の元がありますので。
というわけで、自己稠密なのみならず、全ての元と元の間にはたくさんの元があると仮定しなければいけないようだ、というのはわかると思います。

それでは、上記の条件に「全ての元と元の間には2^\kappa個の元が挟まっている」というのを加えてみましょう。それで順序を確定できるでしょうか?残念ながらまだ無理です。X_i (i\lt\alpha)を全順序の列とするときに、\Sigma_{i\lt\alpha}X_i\{(i, x): i\lt\alpha, x\in X_i\}に以下の順序を入れたものとします: (i, x)\leq (j, y) iff i\lt j or i=j\wedge x\leq y。まあ、要するにX_iを順番に並べるってだけですが。
そんで、\Sigma_{i\lt\omega}({R}_\kappa+1)を考えてみます。すると、この全順序集合には可算だけれども上に有界でない部分集合が存在します。下に関しても同様。そんなものは{R}_\kappaにはありませんので、この二つはisomorphicではありません。

本質的にはこの二つだけが問題だと思います。すなわち、以下が成り立つはずです。

次の条件を満たす全ての全順序集合はisomorphic。

  1. 濃度κの稠密集合Dで、次の条件を満たすようなものが存在する
    • AとBが共に濃度がκより小さいDの部分集合で、(\forall a\in A)(\forall b\in B)a\lt bを満たすようなものならば、Dの元dで、(\forall a\in A)(\forall b\in B)a\lt d\lt bとなるようなものが存在する。
  2. 有界集合の濃度はκまたはそれ以上
  3. cut-complete、すなわち全ての上に有界な部分集合は上限を持つ

あー。ちっとごまかしてますが。証明は実数の場合とほぼ一緒で、単にlimit stageを抜けるために強めた条件を使うってだけのはずです。真面目にチェックしてないので、間違っていたら教えてください。R_\kappaがこの条件を満たしている、っていうのは練習問題ってことで。

追記(3/12):よく考えてみたら、κがsingularのときはいろいろ微妙ですね。とりあえずκはregularと仮定させてください。そうでない場合にどこが上手くいってどこが上手くいってないかはおいおい考えます。