The world according to Woodin

Good boy, bad boy - くるるの数学ノートに関連して。タイトルは"The world according to Martha"とかいう本をもじったつもりだったのだけれども、今ぐぐったらこのフレーズは誰に対してもよく使われるものなんですね。

ってわけでWoodin。彼はいろんな意味でShelahとは対照的で面白いです。「連続体仮説は今なら解けると思う。解答には私が一番近くにいる。今のところ、解けるならば連続体濃度は\aleph_2だ。だがしかし、私ですらまだ確証はない」なんてインタビューがありましたが*1。この自信と慎重さのバランスが面白いですね。
Shelahが同じ状況にいたとしたら「事実としてはわかっている。あとは証明を見つけるだけだ」とか言っちゃうかもしれません。実際、five element basisなどについてははっきりと「正しいとわかっているのに証明できない命題」などと言い切っていましたから。
ZFCに関する態度もこの二人ではまったく違っていて、Shelahは何の拡張もされてないZFCこそが数学の基礎となるべきだという考えですね。それに対してCalifornia schoolの組み合わせ論集合論*2たちは、ある程度のlarge cardinalを仮定した方が自然であってそちらを中心に研究するべきだって感じです。でも、不思議なことにと言っていいのか、共著の論文を出したりもしていますよね。

まあ、他にもいろいろな立場があります。そしてそれぞれの立場から集合論ないしは数学に貢献しているわけです。どのような見方であれ、重要なのはそれが複雑な問題に対応できるだけの数学的直感を与えてくれることだということではないでしょうか?私自身も、日々の研究の中から自分なりの数学観・集合論観を作っていかなければと思います。

*1:これは数年前のことで、今なら「解けた」と言い切るかもしれません。彼本人の言葉としては知りませんが、他の人がそう言っているのは聞いたことがありまし。

*2:記述集合論以外の集合論のことをこういうことが多い。