もう少し詳しく書いてみる(その3)

もう少し詳しく書いてみる(その2) - くるるの数学ノートのまた続き。

前回は、以下の予想のうち「自己稠密」っていうのが十分強くないという話でした。
この性質を(*)_\kappaで上記の性質を表すことにしました。

κを無限基数とする。自己稠密で、最大元、最小元が存在せず、濃度がκの稠密集合を持ち、cut-completeで、濃度が2^\kappaな全順序集合は同型を除いてひとつしかない。

前回の例から導かれたのは、「元と元の間には2^\kappa個の元がある」としないとダメだろうということです。では、そこだけ入れ替えればOKなんでしょうか?
残念ながら違います。最大元、最小元が存在しないというのも、順序集合のサイズがあがったのにあわせて変えなければいけません。それを示すような反例を作ります。
R_\kappa+1R_\kappaに最大元を付け加えたものを表します*1。イメージとしては、R_\kappaに値が1のconstant fuctionを付け加えたものを考えればOK。最大元はMと表すことにしておきましょうか。
Xを\omega\times(R_\kappa+1)として定義します。X上の順序は(n, f)\lt (m, g) iff n\lt m or (n=m and f\lt g)として定義します。まあ、これも辞書式順序の一種といえば一種ですね。この全順序集合が(*)_\kappaを満たし、かつ元と元の間には2^\kappaの元があるというのも満たすのは簡単ですね。
さて、ここで\{(n, M): n\lt\omega\}という集合を考えて見ましょう。これは、明らかに上に非有界ですね。というわけで、Xには可算な上に非有界な集合が存在します。R_\kappaには存在しないっていうのも明らかですね。ですので、\kappa\geq\aleph_1ならば、XとR_\kappaはisomorphicではありません。
上に非有界な集合の最小基数をよくcofinality(共終性)といいます。下にの場合にはcoinitialityですが、こちらはあまり使いません。順序数のcofinalityはとてもとてもとても重要です。この言葉を使うと、上の現象はXのcofinalityは\aleph_0であるけれども、R_\kappaのcofinalityは\kappaである、というふうに記述できます。
上記の例からわかるのは、最大元や最小元が存在しないというだけでは十分ではなく、cofinalityとcoinitialityも必要な情報であるということです。
というわけで、変更された予想はこうなります。

κを無限基数とする。以下の条件を満たすような全順序集合Xは同型を除いてただひとつ。

  1. x\lt y\in Xならば、xとyの間には\kappa個の元が存在する
  2. Xのcofinalityとcoinitialityは\kappa
  3. cut-complete
  4. 濃度\kappaの稠密集合が存在
  5. |X|=2^\kappa

これでいけるのか、っていうのがちとわからないんですが。次回は、そのわからないあたりを書いておきます。多分、TodorcevicとかJustin Mooreに聞いたら即答されると思うんですが(爆)。

*1:なぜ+1か、っていうのは順序数演算を考えてください。順序集合を結合する場合にはよく+を使います。