3時間でわかった気になる強制法(その1-1)
ずっと予告していたやつ、半分くらい書けたので少しずつアップします。その1、その2、その3がそれぞれ1時間ずつでわかった気になって3時間で完成という方針で。歴史的経緯は無視して、「今から考えると、こんなふうにして発見されるのが一番自然だよね」というような説明をしています*1。また、Cohenの元々の論文にあるような強制法のことは全く知らずに書いています。Kunenの定式化がやっぱりベースになっているかな。
さてと。P.Cohenが連続体仮説の独立性を証明する前にさかのぼります。あなたがスタンフォード大学でSol Fefermanにそそのかされてこの問題を解こうと思い立ったとします。まずなにをやればよいでしょうか?
それがその当時にわかっていたら苦労は無かったわけですが(爆)。
ZFCが無矛盾*2であると仮定します。証明したいのはすなわちZFC+¬CHが矛盾しないこと*3。論理式の集合が無矛盾であることを証明するときには、以下の定理が役に立ちます。
定理(コンパクト性定理)Γを論理式の集合とする。このとき、
Γが無矛盾であることと、Γの任意の有限部分集合が無矛盾であることは同値である。
定理((意味論的)完全性と健全性)Γを論理式の集合、φを論理式とする。このとき、
Γからφが証明できることと、Γを満たすようなすべてのモデルがφを満たすことは同値である。
というわけで、方針としては、ZFCの無矛盾性を仮定して、
- ZFC+¬CHの有限部分集合Γを任意にとる
- 完全性定理により、ZFCのモデルVが存在するので、それを固定する
- Vの中で、Γのモデルとなるような集合の存在を示す。
- コンパクト性定理によりZFC+¬CHの無矛盾性が言える
- ウマー
- 照り焼きにする
です*4。
ここで問題になるのは三番目のステップのみですね。どうやって、Γのモデルを構成すればよいのでしょうか?そこがCohenがぶち破った壁なわけです。これから、まず単純にやってみた場合にはうまくいかないことを説明してみようと思います。