Five element basis(とりあえず版)

とっくに書いていたと思っていて、でももう一回触れようと思っていたfive element basisの話、まだ一回もしてないんですか。ふぅ、こういうのの方をもっとやらねば。今日は(も?)時間はないのでざっくりとだけ書いて自分にプレッシャーをかけておきます。
非可算全順序集合のことを考えます。典型的な非可算全順序といえば何があるでしょうか?まず実数\mathbb{R}がありますね。separableというとても重要な性質を持っています。\omega_1とそれを大小ひっくり返したもの(-\omega_1)もあります。\omega_1は最小の整列順序ですね。
古典的な問題として、「非可算全順序集合は全てこの三つのどれかのコピーを含んでいるか」というのがありました。それを解いたのがAronzajnで、ZFC上で\mathbb{R}, \omega_1, -\omega_1のいずれも含まないようなものが存在するということを証明しました。これに関係しているのが有名なAronszajn treeです。
この結果はShelahによってある意味強められました。彼は非可算全順序集合CでC\times Cが可算個のchainの和集合となっているようなものが存在することをZFCから証明しました。このようなCをCountryman lineと言います。任意のCountryman lineはAronszajnの定理のwitnessになっています。また、Cにはその大小をひっくり返した-Cのコピーは含まれていないことも簡単に証明できます。
というわけで、ZFCから互いにコピーを含まない5つの非可算全順序集合が見つかりました。\mathbb{R}, \omega_1, -\omega_1, C, -Cです。えーと、ちょっとインチキしてそれなりに複雑な実数の集合Rで濃度が\aleph_1のものをとってきます。問題は、非可算全順序集合で、この5つの典型的な非可算全順序集合、R, \omega_1, -\omega_1, C, -Cのいずれのコピーも含まないようなものが存在するだろうか、ってことです。
実は、整合性の意味ではずいぶん前に解けていまして、Sierpinskiのとある定理を使うと連続体仮説からそういうのが存在することが言えることがわかります。問題は、全ての非可算全順序が、この5つのうち少なくとも一つのコピーを含んでいるようなZFCのモデルが存在するかでありまして。
これは昔からShelahやTodorcevicも取り組んだ有名な問題だったのですが、あと少しのところで解けていませんでした。それを解いたのがJustin Mooreで、PFAという公理を仮定すると、そのようなZFCのモデルが存在することがいえます。

つまり、ZFC上でどんなにがんばっても、この5つを完全によけるように非可算全順序集合を作ることはできないわけです。これはとてもnon-trivialだし面白い結果だと思います。ついでにいえば、Shelahが解けなかった問題であることを考えると、証明は異常なほど簡単です。これはJustinの結果全般に言えることで、論文を読んでいていつもだまされたような気分になります。
本当はもっと細かく書きたいし、適当にはしょった定義も書きたいのですが、まずはざっくりと。