プロポーザルの書き方に関して

もっと真面目に時間があるときにしっかりと書こうと思っていたのですが、時間があるときは来ないということが経験的にはっきりしてきましたのでとりあえずやっつけ書きします。30分間で出来る限りということで。後で書き足したり変更したりすればいいや。一時期一生懸命本を読んだり考えたりしましたが、今はその時の蓄積の記憶で書きます。

念のため、私は数学が専門ですし、純粋数学で応用をアピールできない状況を念頭において書いています。

良いプロポーザルとはどんなものか?

冗談抜きに、私が初めてプロポーザルを書いたときにはこのことすらわかっていなかったんですよ。一生懸命良いものを書こうとだけは思っていたものの、それが何を意味するかさえわかっていなかったんです。
もちろん一般的な意味で良い文章である必要はありますが、プロポーザルなどのような文書に特徴的なのは「いろいろな人がいろいろな目的でいろいろな方法で読む」ということです。例えば、

  • 専門家による隅から隅までのレビュー
  • 非専門家による大まかなところの議論
  • 忙しいボスによるざっと読み、などなど。

だから重要なのは、いろいろな読まれ方に対してその人が知りたい内容を間違いが無いように伝えられるように書くことです。細かく読んでいってもきちんとしている、斜め読みしても誤解をされない、段落の最初だけを拾っても意味が通る、段落の最初と最後だけを読んでも意味が通る、箇条書きなどの目のつきやすいところだけを見ても大丈夫、サマリーだけを読んでもとんでもない誤解はされない、というような。
そりゃ無理ですよ、そんなこと。その無理にどれだけ近づけるかがプロポーザルライティングにおける努力なんです。そのことだけでも博士号を時点で知っていたらどれだけ楽だったことか。

そして、最終的な決断を下す立場の人達はほぼ確実にその文書を隅から隅まで吟味する時間もなければ詳細を理解するだけの専門的知識もないということです。いや、それを批判しているわけじゃなくてそういうものでしょう。そういう人たちに、どれだけ誤解のない好印象を持ってもらえるかというのはとても重要なのです。「全部読めばちゃんと書いてある」じゃダメなんですよ。*1

トピックセンテンス

段落の最初の文をトピックセンテンスといいます。いや、ちゃんとした定義は違うかもしれないけれどもとりあえずここではそう呼びます。ここで、段落内で言いたいことはまとめておきましょう。定義を準備しないと説明できない?ならイメージでそれなりに読める文を最初においた上で、あとから厳密な定義をしましょう。数学の論文では良くない作法ですが、プロポーザルは論文ではありません。私は基本的に論理のつながりがとても気になるタイプなのですが、少々の違和感は押し切ってでもトピックセンテンスにそれなりのキャッチフレーズをおきましょう。

テクニカルな定義とか

私は論文では脚注は一回も使ったことがありませんが、プロポーザルでは(許されているならば)強力な武器です。専門家は知っている定義なんか本文にぐちゃぐちゃ書かれたくない、周辺分野の人は興味がわいたり疑問点があったりしたときには定義を確認したい、もっと専門が離れている人は読んでも分からないまたはわかるのに時間がかかるので大体のイメージだけ掴みたい、そういうときには本文は汚さずにテクニカルなことも読みたければ読める脚注は便利です。もちろん使いすぎはよくありませんが。
NSFは字の大きさの下限が決まっていて、普通のスタイルをそのまま使うと脚注の文字は小さすぎるので要注意。

紙の見た目

プロポーザルのレビューをする人はおそらく大量の文書に目を通す事になります。字が密集していたらそれだけで気が滅入るでしょう。適度に箇条書きなどを使って見た目を柔らかくすることは思っているよりも大事です。

三項目併記

「安い、うまい、はやい」みたいに、何かを列挙するときには三つにしましょう。第2と第3がほとんど同じ意味になったとしても、そちらの方がリズムが良いです。英語で書くときには、三つの項目の品詞を揃えることは重要。

Summary

15ページの詳細よりも、1ページのサマリーに時間をかけます。とっかかりとしてはIntroductionをコピペしたり、あちこちの文を組み合わせてやるのもいいかもしれませんが、最終的には詳細からは完全に独立した文章になるまで練るべきです。トピックごとの重み付けとかも詳細とは変わってきます。

subsection

私は論文ではsubsectionは使いませんが、プロポーザルでは多用します。飛ばし読みやピンポイントの読み直しをされることが前提の文書なので、どこに何が書いてあるのかはパッとわからなければいけません。

アピールすること

評価基準に関しては、ウェブサイトなり規則なりをよく読んでおくべきですが、数学で重要なのはテーマが「重要であること」「簡単でないこと」「自分に解ける見込みがあること」をしっかりとアピールすることが大事です。流れが少し歪んだりちょっと要求されているのと違うことを書かないといけなくなってでも、この三つのことをきちんと入れておきましょう。

英語のこと

このことについてはなおさら人に言えた義理ではないのですが、当たり前のこととしてあるスペルミスをしないとか文法ミスをしないとか前置詞ちゃんとするとかに加えて、

  • 同じ単語の繰り返しを避ける。
  • 文のリズムが単調にならないようにする。主語から始まる文章ばかりの時には、仮主語のitから始めたり、倒置を使ったり、前置詞から始めたりしてバリエーションを付けましょう。単体の文としてはベストチョイスでなかったとしても。
  • 仮定法とか倒置とか慣用表現などのちょっと気取った言い方も入れましょう。わざとらしいかもしれませんが、多分「わざとらしいことすらできない」よりはましな印象になるでしょう。

Big picture

長期的な目標、中期的な目標、短期的な目標がはっきりとしていて、しかもつながりを持っているように気を付けましょう。明示的に書く必要はないですが、うーんでもむしろばしっとlong-term goalとか言い切ちゃった方が良い感じのときが多いかなぁ。ここで長・中期的目標として何かの夢を語りだせないならば、それは普段の研究姿勢も見直した方が良いと思います。とかいうと自分の耳が痛いのですが。

とりあえず一区切り

もう30分は余裕で過ぎているのでまだありそうですがとりあえず打ち止め。プロポーザルは面倒だけれども、あとから読み直すと、その時に描いていたいろいろな絵を思い出すことができて、方向性を見直すことができるので、自分自身にとってもよいことが多いです。まあ、皆さん頑張りましょう。

*1:私が読んだ本では、スリーマイル島事故の際にはしょったメモや要点がつかみにくい文章のおかげでどんどんと状況が悪くなっていったさまを書いてあったはず。もう細かいことは忘れたけど。