結城さんとオンラインレビュー

数学ガール乱択アルゴリズム』の執筆も一段落したそうなので、結城さんに関して私がすごいなと思っているけれども、多分あまり話題になってないことを一つ。

あーーっとその前に。なんか2chで私が『数学ガールゲーデル不完全性定理』のときに「アドバイザー」やったとか書いてあったんですが、大嘘ですからね。っていうか、むしろここが重要。普通のレビュー以外にやったことはといえば、大変だからやめた方が良いと言ったことくらいで。

というわけで、礼儀に反しない範囲で必死になって「そんな本を書くのは危険だから絶対にやめなさい!!」と匂わせたのですが、全く効き目がなかったようでプロジェクトはそのまま続行したようでした。今、この本を楽しんでいる人たちにとっては実に幸運なことに。

http://d.hatena.ne.jp/kururu_goedel/20091224/1261638376

それはともかく、オンラインレビューの難しさとそれを乗り越えるための資質について。書籍執筆とオンラインレビューに結城さん本人がそのプロセスについて書かれています。
この「オンラインレビューは共同執筆ではない」とか、「レビューアさんの意見は大いに参考にしつつ、著者が、本の内容に関する全ての決定を行い、全ての責任を負うのです」のあたりのバランスはとても難しいだろうと思うのですが、それを本当に絶妙にやってらっしゃると思います。
なぜそういうのが重要かというと、レビューする側の心理的負担を軽減したり、やる気を起こさせたりするからです。
まず、レビューしてもその意見を一切聞いている様子がないとします。……やる気でるわけないですよね。それだと受け身でない能動的な意見は出てこなくなるでしょう。
逆に意見にいちいち振り回されているとします。意見を出すのが怖くなりますよね。こちらは大きな構想や全体像が見えているわけではないのですし、編集者のように訓練や経験を積んで責任も負うプロというわけでもないので。
結城さんがすごいと思うのは、この二つの点で揺るぎがないことです。私が何を書いても、自分で納得しない限り絶対に変更しないだろうし、変更が失敗してもレビューアの責任には絶対にしないだろうという信頼感があります*1。だからこそ、おぼろげな違和感とか分かりにくさの指摘を引き出せるのだろうと思います。
だから、私は決してアドバイザーなんて立場であったことはなく、それぞれが自分からの感想を言うレビューアの一人であって、それらを活かしているのは結城さんの才覚だろうと思います。

逆に鵜呑みにせずにきちんと理解しようとしてくださるからこそ、数学的間違いはあってほしくないなあと一生懸命見ている面もあります。*2

何を言いたいかと言うと、そのバランス感覚を身に付けて、アドバイスを大事にしながら、しかし主体的に行動できるようになりたいなぁと、我が身を見て思いますorzということで。

*1:だからといって、数学的部分をいい加減に見ることはないですけどね

*2:そんで、間違いを指摘したつもりでとんでもない勘違いしていて結城さんからの返信で気づくとかよくありますが。